UNWTO(世界観光機関)とJNTO(日本政府観光局)の資料を参考にしています。今年、日本は30位から2つ上がったとあるので多少の前後はしているかも知れません。1位はフランスの8,190万人で日本と同じ島国のイギリスも3,010万人、アメリカは5,110万人というデータがありますので日本の低さは物価の高さが原因とも言えないでしょう。日本に関心がないとも取れますが、やはり日本の航空運賃がネックになっていることは確かです。単純に5,000万人近い外国観光客が中国まで来てその中の4,000万人は日本に寄らずに帰ってしまっている訳です。
さらに私たちが一方的に途上国と思い込んでいるマレーシア(1,750万人)及びタイ(1,390万人)よりも日本が外国人観光客実績で少ないことに注目すべきです。そして、これこそがASEAN各国自らが国際化を進めたことによる成果です。
先進国において国内の多国籍企業はその下請けを労働力の安い途上国に求め、それまで企業の底辺を担っていた国内、特に地方の中小企業が軒並み経営不振に陥りました。これに対し途上国においては産業のなかった国内において先進国の工場を受け入れることで現在の目覚しい発展を手に入れたのです。その結果、先進国において大企業以外で働くものたちは職に溢れるようになり、その国内に中央と地方、企業と個人間に大きな格差が生じたのです。私たちが現在直面しているこの課題に対してアジアでは既に一つの回答が提出されています。それが私たちと同様の先進国であるにも関わらず未だに5%を超える成長を続けている香港ならびにシンガポールです。この両国に共通しているのは自ら積極的にその「国内」に世界のグローバル化を取り入れている点です。この中でシンガポールはその成り立ちから多民族共生国家という一面を持っていますが、対して香港は意図的に「ひと」を社会に取り入れています。
香港を旅行すれば、休日、香港島の公園は香港で働くフィリピンの人々で埋め尽くされるという光景をよく目にすると思います。主にフィリピンの女性は家政婦として、男性は香港及びマカオの建築現場で働いています。フィリピン人の大まかな平均年収は上の表の通り14万円(これは国民一人あたりのGDPを基にしていますので厳密には収入ではなく、実際はもっと額は低くなるでしょうが大体の目安として使いました)。仮にフィリピン人にフィリピン国内の5倍の収入となる年間70万円を支払ったとします。香港の年収は266.5万円ですから単純に香港人の25%の賃金で済む訳です。事の善悪は於くとしながらも、こうやってフィリピンの他にもベトナム等から人を受け入れながら国内をグローバル化し、その結果として他民族との共生を果たしつつも国内の経済を成長へと駆り立てているのです。(しかしながら「差別」の問題は残りますが、これはまたここで言う経済とは別の問題になります。)
このように今現在の世界で起こっているグローバル化の波は大変自然な経済の流れであることが分かります。その本質は富める者と貧しい者の両者が得をする関係を築くことに他ならないのです。つまりグローバル化の波にのるということは、世界に現存する様々な格差を自らの国内に取り込むことなのです。現在の日本政府のように途上国の中でも飛び抜けて優秀な者にしかビザを発給しないだとか、外国人の給料は日本人と同額でなければならないとか、既にある世界の格安航空会社を国内に受け入れないなどと政府が国民に規制を設けることは、この波をせき止めようとしていることに他ならず、引いては結果として日本国内の経済を停滞させる原因になっているのです。
途上国の人々に観光ビザをも含めた一切のビザを発給しないという現在の日本の政策は世界の流れに必死になって逆らっているのです。また、外国人を日本人と同じ給料でしか雇えないと法律で規制することは、一見人道的な配慮に見えながら、実際は外国人の就労を拒絶する結果を生みますから、国内はますます彼らに対して無関心になるでしょう。現在の世界のグローバル化が地域間の格差を取り込みながらやがては世界レベルでその格差がなくなる方向へと進む巨大な流れであるならば、日本政府のこういった規制はその流れに逆らい、必死になって今ある格差を温存しようと試行錯誤を繰り返していることになります。皮肉なことにその結果が現在の日本国内の経済の停滞を招いているのです。
※ 恐らく、現在、中国や韓国に対してビザを緩和しているではないかという方もおられるでしょう。中国は日本に代わって世界第二位の経済大国となります。韓国はもとより、中国と日本の間にここでいう「格差」はすでに存在しておりません。彼らは私たちと対等にビジネス(商取引)を行える相手です。今、中国国内で生じている「格差」は政治の問題だと捉えています。

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