今日の日本の現状の発端はバブルの崩壊でした。そのとき、日本政府は当時の金融不安から日本の大企業を保護する政策をとり、企業の体質強化にともない大量の人員整理、新卒の採用を見合わせたために、結果として一時的な非正規雇用者の増大へと繋がるのです。この大量な行き場をなくした労働力に対し、当時の日本政府の対応は社会の構造を改革しようとソフトウェア産業と金融関連事業を強化するとともに新しい産業を興すべくベンチャー創業に社会を誘導していた記憶があります。この当時の政府は既存の国内中小企業に将来的な望みを持てなかったのでしょう。この対策に対し現時点でのその結果はソフトウェア産業は予測された需要はなく、結果的にはプログラムの知識を社会常識にまで引き上げた効果はあっても、実際はインドなどに外注した方がコストダウン繋がっていますし、金融関連商品は国内の規制の問題と絡みつつ国内での発展は難しく、今回のアメリカ発の金融危機に伴い日本の将来を託せない状況で、ベンチャーに至ってはそのほとんどが忘れ去られたかのような結末を迎えています。
現在の時点で結論から申せば、国内の産業構造を政府主導で変えることは資本主義経済の見地からも無理があったし、徐々にでも国内に世界のグローバル化を取り入れていれば中小、あるいは地方にも生き残るチャンスはあったと考えています。今日では、「すきま産業」、「人材派遣」、「介護ビジネス」などが盛んとなっていますが、すきま産業はその名の通り企業が手を出さない「すきま」なのですから産業にまで発達しないでしょうし、「人材派遣業」は非正規雇用の増大があってこそ成り立つという矛盾を抱えています。「介護ビジネス」はこの後でお話しいたしますがいずれも日本産業の救世主とはならないでしょう。
さて、ここで今の世界から見た日本の介護ビジネスを考えます。私がどうしても違和感を拭えないのは介護をビジネスとして考えているという社会の末期的な状況です。太古の昔から老人はいた訳です。東南アジアでこれが問題にならないのは老人の世話は家族、もしくはその親族が面倒を見るという社会のルールがあるからで、介護保険ができる数年前まで日本でもそれが当然だった訳です。本来、介護は夫婦共稼ぎ等の忙しい家庭ではその孫たちが勉強の合間に見ていましたし、その行為は決して生産性を伴うことがないために多額の報酬を期待されるような行為でありません。しかしこれをビジネスとして捉え、他人にその労働を任せるようになると、純粋な労働としての対価を求めいくらお金があっても足らないという現在の状況を生んでいます。以前、夫婦生活において妻の労働はいくらになるかを試算するという企画がテレピなどでありました。例えば年収150万円の夫の妻は絶えず気苦労が多いのでその労働は年300万円に相当するということも可能です。今の介護の現場はこれを大真面目にやっている訳です。
話が逸れましたが、一方でフィリピン社会に目を向けると誰でも寝たきりになっている老人を家族に持っていますし、そのことを苦痛に思っている家族もありません。元々、ホスピタリティに富むと言われている国民な上に、小さい頃から家族で折り重なるように寝ているので他人と肌が触れる事にさほど神経質になることもありません。つまり、彼らにとっては決して介護行為は苦痛にならないばかりか、むしろその才能に秀でていると言われている由縁です。逆に日本人は他人と肌を触れ合うことが極力少なくなっていますから、その現場はキツいものと感じることが多いでしょう。この彼らの特性をよく知り効率的に導入しているのが香港です。香港でフィリピン人は介護のみならず英語を話せるベビーシッターとしても活躍しています。日本では1980年代から彼らのこの性格を悪用してバー等の酒場で働かせたために国際的な問題にまで発展したことはまだ記憶に残っていると思います。しかしながら、私はついに香港の酒場でフィリピンの方が働いているのを見ることができませんでした。恐らく社会もしくは行政がそういう線引きを行っているのでしょう。ここで大切なことは国際的な視点で適材を適所に配する重要性です。こういったそれぞれの国民性を生かすことは世界的な視野での社会のエコロジーだということに日本人は早く気づくべきです。各国民ごとに得意なこと不得意な面を持っています。私でも一般的なフィリピンの方に経理を任せることはお勧めいたしません。
ともかく現時点では、日本政府の規制により日本社会に彼らを受け入れることはできませんので、私たちは海外に出てそのグローバル化した世界の恩恵を受けるより他にありません。一体、その行為にどのようなメリットがあるのかをお話しいたします。仮にあなたがアジアで起業を考えられた場合、国によってバラツキがありますがバンコクでは大体、人件費は月15,000円ほど。アパートの家賃が15,000円ほどで一般的な日本の方ならアイデア次第で借金をすることなく起業できます。さらにカンボジアになると人件費が月5,6千円で済みますし(日本語を話せる人なら5,6万円に跳ね上がるようです)、国の経済の成長率が10%、日本人の観光客だけでも年間16万人を超えています。例えアイデアがない方でも日本の既存の企業を模倣して洗練されたビジネスを展開することだって可能ですし、常に国内には仕事のない者で溢れかえっている状況なのであなたの起業行為そのものを海外援助と呼んでも差し支えないとさえ思っています。ただし問題点もいくつかお話しいたします。ASEAN全体でグローバル化が進んでいる中で法律の解釈が曖昧、かつ二転三転することもなきにしもあらず、ですね。また契約した本人を出生証明書などで確実に特定できないケースなども起こります。国際的なルールが必ずしも通用されるとは限らないため、こうした起業の際、私たちがお役に立てる機会は多いでしょう。しかしながらタイなどはすでに2,000余りの日本企業が進出している訳ですし(中国では日本企業がすでに16,000社に上ります。私たちは個人の方の中国への進出は既に手遅れだと判断しています)、仮に経済の成長が止まってしまった日本国内で起業し失敗したとしても何の保証も得られないのは同じですから、これらのリスクを背負っても余りあるメリットだと思います。
比較的確実に言えることは、もしあなたがすでに日本の中で行き場を失っておられていて、再び日本の景気を回復する事を待ちわびているのでしたらこの先、このまま何もせずに貴方の人生が好転する事態は予想しにくいという事です。しかし、もしあなたが今日本でなんとかなっているようでしたら、その状況を維持されることをお勧めいたします。勿論、私たちがベストだと考える状況は日本が外国人労働者を受け入れるべく門戸を開き、今の行き場を失った方々が日本の法律に基づいて国内でアジアの方々と共に自由に起業されることですが、こればかりは「行政の判断」と言えます。
以上のように当法人は日本の現状を海外のアジアに目を向けることでいくつかの問題が解決できると考え発足いたしました。具体的な理念があるとすれば「国際的な共生・恊働社会の実現」ですがこれを理想主義的に掲げているのではなく、もっと経済的な視点で現実的に考えています。しかし一般的な日本のアジアへの認識に対し私たち自身が首をかしげることも多く、現在の私たちの使命(ミッション)はひとりでも多くの方々をアジア各国へお連れすることとしております。また上記に述べた通り、アジアで起業を考えておられる方を積極的にサポートするとともにその際の問題の解決をこの法人の主要な活動のひとつに挙げています。NGOの活動としては私どもの活動資金ができるまでは現在活動している日本ならびに海外のNGO、ボランティア等を取材し広く皆様にお伝えすることを考えています。
どうぞ、皆様のご支援を賜りますようにお願い申し上げます。

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